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件名:今どの辺り?
温泉の到着時間には追い付くと思う。
豆柴の隣は誰が座ってる?
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(追い付くと思うって…。いくらなんでも車とばしすぎだよ…!)
(隣に誰が座ってるかなんて、小林部長に関係ないし!)
(今どの辺りって、返事しなきゃいけないのかなぁ…)
あゆみは散々迷った挙句、メールの返事を送ることにした。小林部長にメールを送るのは初めてだからか、なぜか画面をスクロールする指先が震えている。
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件名:○○○のパーキングです
私の隣は宮間さんです。
安全運転してください!
あと、豆柴はやめてください!
◆
(送信…っと)
なぜだかわからないけれど、こんな風に自分に連絡をしてくる小林部長がいつもよりほんの少しだけ、可愛い人に思えた。
(…変なの…)
あれだけ行きたくないと思っていた社員旅行も、宮間さんや笹原主任がいてくれるおかげでなかなか楽しい。まとまりがない年齢層様々なバスの車内も、良く言えば賑やかでアットホームだ。
変な人ばかりだけれど、意外といい会社なのかもしれないとあゆみは心の奥で呟いた。



