貸切バスの車内では、カラオケ大会が始まっていた。
社長の周さんがジャッキーチェンの古い映画のテーマ曲で先陣を切ると、合コン真っ最中の営業部若手が流行りの曲を音程無視で降り付きで歌いはじめ、若手チームは大盛り上がり。その後は年功序列で年配職人チームとパートおばちゃんチームの演歌が続いた。
バスの窓から見える景色は徐々に緑と田んぼばかりの田舎へと変わっていく。次のパーキングで休憩をとりますという運転手のアナウンスが流れ、カラオケ大会は一旦休憩となった。
束の間の静けさを取り戻した車内では、あゆみも他の社員たちも、次のパーキングでの休憩に向けて財布を片手に買い出しの準備を始めている。
ブー…ブー…ブー…
あゆみのバックの中で、スマホが震えている。
メールを確認してみると、またしても小林部長からだった。
(今度はなんだろ…)
やましいことは何もない。けれどやはり小林部長から個人的にメールを受け取るのはなぜか違和感がある。
あゆみはバッグの中でそっとメールを確認した。



