「小林部長、今年も遅刻かー」



あゆみの隣に座った宮間沙耶が言った。




「でも良かったよね、小林部長が遅刻したおかげでさ、あたしもあゆみちゃんと隣に座れた訳だし」




「ハイ、本当に。ていうかみんな、もう座席表なんて関係なくなっちゃってますね」




あゆみは後部座席の異様な盛り上がりを見ながら答える。


無料で無制限に配られる缶ビールや酎ハイのせいもあってか、若手チームの合コンもハイテンションな営業部のおかげで大盛り上がりだし、いつもは無愛想な神様たちも、お酒が入れば顔を赤らめて上機嫌だ。パートのおばさま達はお菓子片手にまるで集会所の婦人会か何かのノリである。



若手チームの中に一際華やかな私服姿でエリカ様が座っている。一応、合コンに参加してはいるものの、小林部長がいないからか若干表情に不機嫌さが滲み出ている。

けれどそれさえも、この場においては営業部若手の「ツンデレ!最高ですねエリカさん!」の一言で更に盛り上がるネタとなっている。




ブー…ブー…ブー…

あゆみのバッグの中で、ピンクのカバーをつけたスマホが震えていた。取り出して見ると、メールが一通届いていた。



(…小林部長からだ…なんだろう)



仕事中に電話のやりとりをしたことは何度かあったけれど、小林部長からメールを受け取るのは初めてだ。

なぜか少しドキドキしながらメールを開く。やましいことはないはずなのに、隣の宮間さんを気にしながら画面をタップする。