神様たちだからこそ出来る品物、正確に出せる寸法、まさに神業といえる技術は会社の売りのひとつでもあるけれど、彼らがいなくなってしまったら、もう作れないのでは意味がない。


せめて、図面だけではわからない彼らのメモや細かい調整の記録だけでも、データとして図面と一緒に残したいとあゆみは考えていた。




「この図面がやぶれて読めなくなったり、汚れてメモが消えたりしないように、きちんと残しておきたいんです」




あゆみが言うと、小林はうんと頷いた。




「確かにその通りだな。わかった、性能の良いスキャナーを探しておくよ」




意外にもあっさりと、小林はそれを了承した。あゆみは少し驚いた。




「いいんですか?あ…ありがとうございます!」




「良い意見はすぐに採用することが、会社が成長する秘訣だって、何かで読んだ」



小林は笑った。




「そのかわり、社員旅行には必ず参加すること。約束な」




「えっ?!なんでそうなるんですか?!」



「むしろ、なんでそこまでして行きたくないのか俺にはわからない。俺が来いって言ってるんだから、おとなしく参加しろよ、な、豆柴くん」



(ま…豆柴くんって…まさかこのままニックネームにする気じゃ…)



「…豆柴はやめてくださいっ!」



「いいじゃん。似てるんだし」



(もう…!ほんとにやだ!)