(わ…笑われてる…?なんで…?)
訳がわからず小林を見上げると、綺麗な顔と目が合った。形の良い顎はまるで美術館にある彫刻のようにも見える。
(こんな近い距離で見ても完璧なんだ…。年上なのに、肌までわたしより綺麗だし…、毛穴とかないし…。この人、何者…?)
「あ…あの…、手、離してもらえませんか…」
「んー、どうしよっかな」
小林は笑った。
(か…からかわれてる?!)
あゆみがさらに後退りしようとすると、小林はそれに負けじと右手であゆみを引き寄せる。
「は…離してくださいっ…!」
(もう!なんなのこの人!)
「だって可愛いから。…なんていうか、撫で回したくなる感じ?豆柴みたいだよね、あゆみちゃんて」
(豆柴って…。褒めてるつもり…?やっぱりこの人、なんか変!)
「ご褒美は、キスでいい?」
(な…な…なに言ってるの!?)
「いっ…いりませんっ!!!」
力任せに握られた手を振りほどくと、小林は「いらないのかぁ、残念…」と言って口を尖らせて見せた。
振りほどいた手には、まだ小林の手のひらのぬくもりが残っている。
あゆみは恐らく真っ赤になっているであろう自分の頬に手を当てた。
(キスなんて、簡単に言わないでよ…)



