「邪魔をするんじゃない!あんたも、こんなに近付いたら怪我するじゃろうが!」
いきなりすごい表情で怒鳴り散らされた。あゆみは驚いて後ろへ下がり、「す…すみません…」と頭を下げた。
「この、図面のものを大至急仕上げて欲しいと小林部長から言われて来たんですけど…」
あゆみが恐る恐る図面を差し出すと、磐田さんはそれを一瞥して、ふんっと鼻息を吹き出した。
「こんなもん、あんないい加減な金型で作れると思うほうが間違っとるんじゃ」
磐田さんは怒った顔でぼそっと言った。
「一回うまくやってやったら、調子に乗りおって。ワシはもうそんなもんはやらん!」
(そ…そんな…)
でも、大至急なのにとあゆみは呟いた。他にできる人はきっといないのだろうなとあゆみは解らないながらにそう感じた。
神様1号、たしか、特技は金型の研磨とボーリング。
「でも、磐田さんしか出来る人がいないんでしょう?やってもらえないと、困るんです」
「そんなこと、知ったこっちゃない」
磐田さんは、作業着のポケットから、しわくちゃのショートホープを取り出して吸い始めた。くわえ煙草で作業をする姿が古い映画のようによく似合っている。



