笹原主任はあゆみに「頑張ってね。磐田さん、怒るとこわいから」と少し脅かすように言って、事務所へと上がって行った。
「やっぱり怖いのか…やだな…」
図面をもう一度見直してみる。確かに古い。難しいのかどうかは図面を見ただけではあゆみにはわからないけれど、笹原主任がそう言うのだから難しいのだろう。
「よしっ、とりあえず行ってみよ」
あゆみは気合いを入れ直し、神様たちの部屋へ向かった。
細い通路を歩くたび、がしゃんがしゃん、シュー、という機械音が大きく聞こえて来る。
小林部長に教わった通り、重厚な扉の横のボタンを押して、神様の部屋の扉を開ける。
「すみません!」
三人の神様は、黙々と働いていて、あゆみには見向きもしない。
「あのー!すみません!磐田さん!」
1号こと磐田さんは、難しい顔で機械を睨みつけている。
「お仕事中すみません!磐田さん!」
思い切り叫んだ。いくら機械音がうるさいからといっても聞こえていないはずはない。
(無視…されてる…?)
もう一度、こんどは思い切り近付いて、耳元で叫んだ。
「あのー!磐田さん!お願いがあるんですけど!」
図面を持って、磐田さんの目の前に掲げてみる。
その瞬間、磐田さんの機械音がシューッと止まった。



