「お、もう名前覚えてくれてたんだ!嬉しいな。新人さんに怪我がなくてよかったよ」



営業部主任の笹原さん。ササハラササハラササハラ。


噛みそうな苗字だなと思ったことと、すっきり系イケメンの小林部長とは違う、かわいい系のイケメンだというのが初対面で印象に残っていた。



ササハラ主任。下の名前は知らないけれど、ササハラサトシとかだったらどうしよう。



あゆみは目の前の主任にもう一度、深々と頭を下げた。



「わたし、本当にどんくさくって、よく転ぶんです。助けていただいてありがとうございます!」



「どういたしまして。面白いね、新人さん」



笹原主任はははっと声を出して笑った。



「小林部長の補佐は大変だと思うけど、頑張ってね。応援するよ」



「あ…ありがとうございますっ!」



(優しいんだな、笹原主任は。顔もかっこいいし、すごくモテそう)



「その図面は?SSベアリング?」



笹原主任があゆみの手元の図面を覗き込む。



「ずいぶん古い図面だね。それに、かなり難しい品物だよ。金型も相当古いんじゃないかな」



「えっ?そうなんですか?」



「たしかそうだと思うけど。金型のメンテナンスもされてないはずだから、うまく寸法が出るかわからないよ。誰が作るの?」



「えと…神様…いえ、磐田さんです。大至急だそうで」



ああなるほど、と笹原主任は頷いた。



「磐田さんなら、出来るかもしれないね」


やっぱり神様はすごいんだ。

あゆみは思った。笹原主任の納得した表情に、神様の凄さが現れている。