三階から、階段を使って一階の加工フロアに向かって降りていく。


タンタンタン、タンタンタン。


階段が好きだと小林部長は言っていた。下りより上りが好きだと言ってもいたけれど、自分は下りのほうが断然好きだとあゆみは思った。階段を上るのが好きな人なんて、聞いたことがない。



(神様たちの部屋に行けばいいんだよね…)



手にしたA4の図面を、階段を降りながら改めて確認する。

磐田さんに言って大至急仕上げ。完成がいつになるか磐田さんに直接確認。あゆみは小林に指示されたことを頭の中で何度も繰り返した。



(磐田さんに大至急…完成予定を直接確認するまで戻って来るな…かぁ…)




図面を見ながらタンタンタン、と階段を下りる。


タンタンタン、タンタンタン、ズッ…




「…えっ?」



あゆみが足もとの違和感を感じたのと同時だった。



「あ!危ないっ!」




男の人の声が聞こえて、あゆみは視界が急にがらりと変わるのを感じた。



(あ、何か踏んだ?)



人よりどこか、ワンテンポ遅いとよく言われてはいたけれど、こういうところが原因かもしれないとあゆみは階段を踏み外す一瞬で考えていた。



「きゃぁっ!」