(典山さんのサインがノリスケさんにしか見えなくて、そしたらSSベアリングがサザエさんベアリングの略に見えてきて…なんて言ったら怒られるよね…)



「書類がたくさんあったので覚えました。磐田さんって誰のことですか?」




「磐田さんは、うちの職人さんだよ。ほら、紹介しただろ?神様の部屋の、頑固オヤジ1号だよ」



あああの人か、とあゆみは思い出した。挨拶したのに、思いっきり無視された人だった。小柄な1号、太っちょの2号、細長い3号。




「わかりました。磐田さんに、この図面の品物を仕上げてもらえば良いんですね」



「ああ。大至急だよ、大至急。あと、仕上がりはいつになりそうかも磐田さんに直接確認すること。わかった?」




「はい、わかりました」




(でもたしか、頑固オヤジは浪岡さんの言うことしか聞かないんじゃなかったっけ…)




あゆみが少し動揺したのがわかったのか、小林は意味深な笑みを浮かべた。




「磐田さんに確認とれるまで、ここには戻って来るなよ」




(そんな……)




「わかりました…。行ってきます」




あゆみが社長室の扉に手を掛けると、小林は満面の笑みで手を振った。