「デスクもすっきり綺麗になったし、さっそく本日の初仕事といこうか」
マグカップを手にコーヒーをゆっくり飲みながら、ソファーに腰掛けたままの小林が言った。
(片付けるの、一切手伝ってくれなかったくせに…)
あゆみははいと頷いた。初仕事ってなんだろう。また掃除か片付けか、もしかしてコンビニ行って来いとかそういうのだろうか。
「この図面の商品、磐田さんに言って大至急仕上げてもらって」
小林は一枚の図面をあゆみに手渡した。A4サイズの図面には何やら歪な形の見たこともないものが細い線で描かれていた。
図面の右上には、つい昨日パソコンの得意先欄の一番トップにあゆみが入力したばかりの社名が書かれている。つまり一番のお得意様からの注文品ということだ。
「はい、あの…磐田さんってどなたですか…?」
あゆみは図面と小林の顔を交互に見ながら言った。
「SSベアリングの担当の方はたしか…典山さんですよね…?」
小林は一瞬驚いたような顔であゆみを見た。
「もう覚えたのか?」
昨日のデスク掃除で一番多かった書類は、SSベアリングの典山さんから周さんかもしくは小林部長宛のものだった。ノリヤマとカタカナでサインされている手書きのファックス用紙もあり、あゆみは勝手に頭の中で「SSベアリングのノリスケさん」とインプットしてしまっていた。



