あゆみの頭の中に、周さんと小林部長のまるで親子のようなやりとりが浮かんでいた。
(だから、あの二人はあんなに仲がいいんだ。社長と従業員が、あんな風に話せるはずないもんね…)
「他に、何か聞きたいことはある?部長のことだから、桜庭さんになんにも教えてくれないんじゃない?」
宮間さんは、なんでも聞いて、と笑いながら言い、あゆみは少し考えてたずねた。
「あの…周さんが中国に帰るって聞いたんですけど…」
「ああ、そう。周さんは四川の人なんだけど、四川のご両親の体調がすぐれないらしいの。周さんは、本当は一日も早く中国に帰りたいみたいなんだけどね、小林部長が半年待ってくれって頼んだんだって。今でも実質的な社長の業務はほとんど小林部長がやっているから、周さんがいなくても大丈夫なはずなんだけどね」
なるほどとあゆみは思った。複雑な状況が、ようやく理解できたような気がする。
(だけど、それならなんで私みたいな何にも知らない事務員を雇ってくれたんだろう…)
「小林部長の考えてることは、彼自身か周さんくらいにしかわからないわ」
あゆみの考えを察したのか、宮間さんは呆れたように呟いた。



