「あの…小林部長ってそんなに変わってるんですか…?」
「あー、うん。仕事はできるし顔もいいけど、残念ながら性格があれじゃあね。ゴミの分別は出来ないし、女性社員にセクハラするし、お調子者だし、時間にルーズだし、気が向いたときしか働かないし、これで仕事ができなかったらあんなのとっくにクビよ!」
「そ…そうなんですか…?」
驚いた顔をしてみたものの、あゆみは内心やっぱりそうなのかという気持ちでいっぱいだった。
(だってあんなに汚いデスク、初めて見たもん…)
「だけどね、」と宮間さんは、付け足した。
「仕事はほんとにできるんだよ。四年前に小林部長がうちに来るまで、うちはただの小さな町工場だったの。従業員は、周さんと他に職人さんが5人、パートさんが3人しかいなくて、事務員も経理の名倉さんとあたしと浪岡さんの3人だけだった。それがね、社長が亡くなって、その息子の小林部長が海外留学から帰って来て、それからは小林部長がバンバン仕事をとってくるようになったの。あっという間に事務所も工場も大きくなって、従業員も一気に増えた」
(小林部長が先代の社長の息子…?!)
「えっと…でも、社長は周さんなんじゃ…」
頭がこんがらがってきた。あゆみが質問すると、宮間さんは「一気にいろいろ話してゴメンね、」と舌を出して見せた。
「周さんは、亡くなった小林部長のお父さんの大親友なの。うちの会社はね、亡くなった小林社長と周さんが、ふたりで作った会社なのよ」



