その日の仕事帰り、あゆみは電車を途中下車して百貨店に立ち寄った。



キッチン用品や雑貨を扱う、お気に入りのショップで小林部長用のマグカップを探した。




(どうしてわたしが部長のマグカップ買わなきゃいけないんだろ…)




初めはそう思っていたあゆみも、いざ選び始めると妙にこだわってしまい、小林部長にはどんなカップがいいだろうと考えるうちになんだか楽しくなってしまっていた。



(あ、これかわいい。自分用も欲しいなぁ…)



あゆみが手に取ったのは、鮮やかなグリーンからイエローに変化していく細かいストライプ柄のマグカップだった。色違いで、赤からオレンジに変わるストライプ柄のマグカップも隣に並んでいた。




(よし、これにしよう)



鮮やかなグリーンとイエローのストライプは、小林部長によく似合う気がした。

あゆみは、迷った挙句、自分用にも赤のストライプ柄のマグカップを購入することにした。



(お揃いも変だし、赤は自宅用にしようっと)



紙袋にマグカップをいれてもらい、店を出ると夜7時を回ったところだった。帰りに百貨店に寄ってもこんな時間に帰れるなんて、なんて素敵なんだろう。

少しくらい変な会社でも、部長補佐のはずが次期社長の雑用係でも、がんばって働いてみようとあゆみは心に決めていた。