あゆみの出社一日目はあっという間に終了した。
なにしろデスクに山積みにされていた書類は膨大な量と種類があり、一番下の地層にはなんと一年以上前の資料までもが混ざっていたのだ。
(一体いつから掃除してなかったんだろう…)
捨てても良さそうな資料はほとんどなく、あゆみは仕方なく事務所で新しいファイルを何十冊ももらい、そのすべての資料を得意先別、種類別に分けてファイリングした。わからないながら付箋も付け、図面は番号の若い順に並べ、どこに何が綴じられているか一目でわかるようにした。
山積みの資料と図面をやっとのことで片付けた下から出てきたノートパソコンを起動させ、あゆみは自分専用のファイルを作成した。
ファイルには、整理整頓した書類の中から重要だと思われることを箇条書きにしていった。
得意先の名前は山積みの書類の中でも特に多かった取引先から順に担当者名や扱っている商品名もセットで入力し、図面の番号と照らし合わせてファイルからすぐに取り出せるように編集した。
あゆみはあまりパソコンが得意なほうではなかったけれど、そうでもしないとこのデスクは一生片付きそうにはなかった。
デスクの引き出しの中も同様で、文房具や検査器具、小さな金属の部品の様なものが一切分別することなく雑に放り込まれており、あゆみはそれらも小さなトレイで種類別に分け、取り出しやすいよう入れ直した。
量も種類も増えたファイルは、社長室の中で使われずに埃をかぶっていた本棚に収納した。
社長の周さんはというと、あゆみと小林を社長室に置いて加工場に下りてしまい、一度も戻って来なかった。



