それきり、ぷいと横を向いてしまった小林部長はちょっぴり頬が赤くなっているようにも見えた。




翌朝、8時に迎えに来る小林部長にあわせてあゆみは朝の5時に目覚まし時計をセットした。その目覚まし時計が鳴るより早くに目が覚めて、シャワーを浴びた。いつもより念入りに体を洗って、シャンプーはちょっぴり特別な時用にと買っておいたフレッシュローズの香りのもの。




(んー…いい香りーー…。小林部長も気付いてくれたりして…ふふっ)





念入りに髪をブローして、その間に韓国のお土産でもらったかたつむりのパック。肌のお手入れも完璧だ。
背中まである長い髪は、いつもはストレートのハーフアップだけれど、今日は特別にゆる巻きにしてふわっとさせたダウンスタイル。
メイクもいつもよりちょっぴり丁寧に、チークもシャドーも明るめのものを選んでみる。

買ってからまだ一度も着ていなかったワンピースに、9センチヒールのパンプスを履いて鏡に自分の姿を映してみる。




(…デートだもん。これくらいしたっていいよね…?)




小林部長は、いつもと違う自分に気がついてくれるだろうか。

好みに合わなかったらどうしよう。




(…そういえば、小林部長ってどんなファッションが好きなんだろう。ぜんぜん知らないや…)


ふと頭の中に、石橋エリカの姿が思い浮かぶ。


(目の保養、なんて言ってたけど…ああいうセクシーな格好が好きなのかな…)


自分には到底無理だ、とため息をつくと、家の外から車のクラクションが聞こえた。