それは昨日のことだった。

いつも通り、ソファーであゆみがいれたコーヒーを飲んでいた小林部長が何の前置きもなしに突然言ったのだ。





「明日、映画でも見に行くか」




「えっ?」




(いま、映画って言ったよね?それって…)



あゆみが目をぱちくりさせて小林部長を見詰めると、むすっとした顔で彼は言った。




「えっ?ってなんだ。デートだよ、デート」




「…えっ?」




(…ええええーっ?!!デ…デート?!小林部長と…?!)




「デートって…。えっと、あの…、でもですね…あの…」




「…なんだ。嫌ならはっきりそう言えよ」




「そんなっ!嫌とかじゃ…!」




「じゃあ素直に、はい、でいいだろ」




(そういう問題じゃなくて…!)




デートは嬉しい。飛び上がるくらい嬉しい。まさか小林部長から映画に誘ってもらえるなんて夢みたいだ。

でも、そんなことの前にもっと重要なことがある。

これだけは、確かめておかなければ…。