◇
それは昨日のことだった。
いつも通り、ソファーであゆみがいれたコーヒーを飲んでいた小林部長が何の前置きもなしに突然言ったのだ。
「明日、映画でも見に行くか」
「えっ?」
(いま、映画って言ったよね?それって…)
あゆみが目をぱちくりさせて小林部長を見詰めると、むすっとした顔で彼は言った。
「えっ?ってなんだ。デートだよ、デート」
「…えっ?」
(…ええええーっ?!!デ…デート?!小林部長と…?!)
「デートって…。えっと、あの…、でもですね…あの…」
「…なんだ。嫌ならはっきりそう言えよ」
「そんなっ!嫌とかじゃ…!」
「じゃあ素直に、はい、でいいだろ」
(そういう問題じゃなくて…!)
デートは嬉しい。飛び上がるくらい嬉しい。まさか小林部長から映画に誘ってもらえるなんて夢みたいだ。
でも、そんなことの前にもっと重要なことがある。
これだけは、確かめておかなければ…。



