「さ、それじゃあパートのお姉様たちへの自己紹介もすんだところで…」
小林が話し始めると、おばさんたちはまた笑った。
「ほんと、小林君はお世辞が上手いわぁ」
「ほんとほんと!顔がいいからって、その手には乗らないわよー」
口々に容赦なく部長である小林にツッコミを入れる彼女たちは、皆そろって陽気で楽しそうだ。
パートのおばさんたちから「小林君」なんて呼ばれても嫌な顔ひとつせず、小林部長もそれを一緒になって楽しんでいる。あゆみはそれに心底驚いた。
「お姉様たちは、うちの要だからね。あゆみちゃんもいろいろ教わることがあると思うよ」
呆気にとられるあゆみに小林は笑顔で言った。
「お姉様たちの次は…そうだな、頑固オヤジたちに挨拶に行くか」
小林はふっと笑った。
「次も面白いのが沢山いるよ」
「はぁ…」
おばさんの次は頑固オヤジ。あゆみの心にまたしても不安の波が訪れた。
この会社で、やっていけるだろうか。一度リタイアを経験したことで、臆病になっているだけだろうか。
あゆみの不安を察したのか、小林はあゆみの肩をぽんと叩いた。
「大丈夫。リラックス、リラックス!」
「は…はい…」



