「いいよ、入って来て!」



部屋の中から小林の声が聞こえた。あゆみはしゃんと背筋を伸ばし、「よしっ」と小さく呟いて、部屋の中へと足を踏み入れた。




「あらまぁ!かわいらしい!」



「ほんと!やだ!オドオドしちゃってヒヨコみたい!可愛いー!」



「ほんとに二十代?!幼いわねぇー高校生みたい!」




部屋の中には長いテーブルがあり、十数人の作業着姿のオバさん達が、ずらりと並んで座って何かを組み立てていた。
彼女たちの目の前にはそれぞれ小さなネジや細かい金属の部品が綺麗に並べられている。


彼女たちはあゆみを見た瞬間、次々に可愛いだの子どもみたいだのと口走った。誰かが何かを言うたびに爆笑が起こり、挙句の果てに、「小林くんはこういう子が好みだったのね」なんていう台詞まで飛び出した。



おばさん達の迫力に圧倒されたあゆみは、しばらくオロオロとその場に立ち尽くしていたが、深々と頭を下げて思い切って言った。



「桜庭あゆみ、26歳です!金属加工は素人で、まったくわかりません。皆さん色々とご指導よろしくお願いしますっ!」



あゆみが顔を上げると、あちこちからパチパチと拍手がおこった。おばさん達の脇に立つ小林とふと目が合うと、彼は満足そうに微笑んで、あゆみを見つめていた。