歌姫さまと腹黒王子

愚痴をだらだらとつぶやきながら、屋上でのんびりと昼寝をしようと買った購買のパンをもって非常階段を上っていく。

すると、のぼりきってドアノブに片手をかけたとき、それはとぎれとぎれにも深い悲しみと全身を駆け巡るような切実な祈りを伴って俺の耳に届いた。

「━━もここで紡ぎ続ける、━ったしの物語  たとえ誰かが嗤っても
  
 たとえだれかが━━けっても 

 それでもここで歌い続ける


   ━━でいられるように

   あなたに嘘をつかずにいられるように」


おもわずドアのガラス窓のぶぶんからのぞくと、そこには少女がひとり、こちらに背を向けフェンスに腕を置き若干寄りかかる恰好でいるのが見て取れた。


気づかれないようにそっとつかんでいたドアノブを回して少女のいる場所へ足を踏み入れる。少女はまだ気づかないでゆっくりとした調べをそっと紡ぎ続けている。


ああ、なんだろう。この、どうしようもなく引きつけられていく衝動。
ずっとそばに置いておきたくなるような。


と、その時相手が俺の気配に気づいたのか、顔をこちらへと向けようとした。


その瞬間、ざぁぁぁっと風が吹きわたって、少女の腰辺りまである漆黒の黒髪が、びゅっと舞い上がりたなびいて彼女の顔を隠した。