大丈夫、私は一人じゃない。

何度その言葉を自分の中で繰り返してきただろう。
いつもいつも灯りのついていない玄関。

只今って声が、白い壁に虚しくこだまする。

━━やだ、私はこんなところいたくない。


マンションの扉をけやぶって、一目さんにあの場所へ。

私が自由になれるところ。

ざぁぁっ
水の流れる音が聞こえる。


私は制服のリボンをほどいてボタンをはずす。
ついでに近視用のメガネ、腕時計、後ろでぎゅっと一つに束ねていた髪。
自分を縛り付けるものすべて。


すぅぅっ

ほら、わたしが自由になれる、解放されるときが来た。
家の片隅にはびこっている暗闇からも、私を現実に縛り付けるこの時間からも。

まっしろな自分。
まっすぐな自分。

私はこうして私になれるのだ。




━━うたおう。


くるり、くるり。

ゆっくりとまわりながら。優雅に、儚くも。


「今もここで紡ぎ続ける、私だけの物語  たとえ誰かが嗤っても
  
 たとえだれかがあざけっても 

 それでもここで歌い続ける


   わたしがわたしでいられるように

   あなたに嘘をつかずにいられるように」