「ばあちゃん来たよ〜。」

聞いた事のない声。
制服に着替えながら
おばあちゃんとその"誰か"の会話を聞いてた。

「頼むよ、コウ。」
「まかせとけって。で?どこいんの?」
「2階の部屋だよ。」
「オッケー。」

話がひと段落した後、その"誰か"の足音が近づいてくる。
えっ?
まさかあたしの部屋?

着替えが終わったのと同時に

バンッ

勢いよく部屋のドアが開いた。
そこには日に焼けた肌に黒髪がよく似合う男の子が立っていた。
「よぉ。準備は出来た?」
ビックリして声も出ないあたしに
とびきりの笑顔を向けるその男の子は
「早く行こうぜ。遅刻しちまうよ?」
あたしの手を取って部屋を出ようとする

「ちょっ…ちょっと待って。あなた誰なの?」
「は?聞いてねーの?」
「え?何が?」
「何だよぉー。」
男の子はパッと手を放すと1階に走って行った。
あたしも後を追いかける。

「なんだよ、ばあちゃん。言ってねーのかよ。」
「あららら。忘れてたわ。」
「マジかー。」

2人の会話にわって入る。
「あの…おばあちゃん?」
「ナオちゃん。ごめんよ、言うの忘れてたかな。」
「?」
「俺、杉田コウ。俺のばあちゃんとナオのばあちゃん、友達なんだ。」
「それでおばあちゃんがコウにナオちゃんの事頼んだんだよ。」
おばあちゃん!言うの遅すぎ!

「まぁとりあえず学校行こうぜ。自己紹介もすんだ事だし。」
すんでないぢゃんっ。名前しか聞いてないし…。
言いかけてやめた。

「いってらっしゃい。」

悪ぶる様子もなく見送るおばあちゃん
おばあちゃん…あたし知らない人と
どうやって過ごすのよ。

学校らしき建物が見えてくる。
近づくたびにあたしの気持ちは沈んでいく。
そんなあたしの横でコイツはのん気に
鼻歌なんか歌ってる。
でも、さっきは気づかなかったけど
コイツって…イケメンだよね?
昔のあたしだったらミクやルイ、トモ達と騒いでたよきっと。
1番騒ぐのはイケメン好きのルイだよね

「何にやけてんの?」
いきなりあたしの顔をコウが覗いてきた
ビックリしたあたしは
「キャッ」
自分でもビックリするくらい女の子らしい声を出して飛び跳ねてしまった。
それを見て大爆笑のコウ。

「笑いすぎ!」
いつまでも笑い続けるコウにあたしは
我慢出来ず言ってしまった。
「ご、ごめ、ん。ぷっ。」
もういい。
そのまま歩き出したあたしにコウがいきなり言った。
「ナオはナオだよ。」
振り向くあたしの目には
コウの優しい笑顔が移っていた…。