あなたと出会うまで、泣くような恋を知らなかった。
恋がこんなに辛いなんて知らなかった…


「暑っ…」
 私は今日久しぶりに宮崎の土を踏んだ。8月の暑い日差しが容赦なく私を襲った。
「優汰…どこっ!?」
 私はフェニックスが多く植えられている宮崎空港の外に出てつぶやいた。本来ならば、2つ年下で20歳の優汰が車でここまで迎えに来ているはずなのだ。
私は暑さに耐え切れず、空港内に戻る事にした。
私は元々、宮崎で生まれ育った。しかし、東京の大学に進学し、さらにバイトをしていたため、年末もGWも宮崎に帰る事が出来なかった。大学4年の夏休み。就職も無事決定し、こうして夏休みに帰省できたのである。
「おった!姉ちゃん!」「夏姉!!」
突然私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「遅い!」
そう、それは優汰だったのだ。どういう事か、私の6つ年下の従姉妹、舞未も連れている。
「ごめん!」
「許さないっっ」
「夏姉っ☆」
舞未が私に抱きつく。
「舞未〜久しぶり!今日はどうしたの?」
私は舞未に満面の笑顔をふりまき、聞いた。
「舞未はぁ〜空港大好きなのっ☆」
「嘘つけ。彼氏が帰ってくるくせに」
間髪入れずに優汰が口をはさむ。
「優汰兄!なんでばらすの!?」
「舞未、どんな子なの?」
私は笑いながら口をはさんだ。
「あのね〜ちょっとジャニ系で〜頭良くて〜めっちゃ優しい人!!」
舞未が幸せそうに話す。
「そっかぁ〜。どこから帰ってくるの?旅行かなにか?」
「長崎っ!長崎の大学に行ったから〜…」
「えっ!?年上!?」
「うん。高校の先輩っ」
「そっかぁ〜!!!」
「舞未、長崎から飛行機来たばい」
優汰が舞未に教えた。
「嘘っ!!剛君探さなっ…」
「姉ちゃん…秀行さん所かいはがき…母ちゃんとかに見られんように…持ってきた…」
優汰が舞未に聞こえないように、こそこそと話す。
「秀行の所から…?見せて?」
私は優汰からはがきを受け取った。私はそのはがきを見つめていた。涙が1粒落ちた。
「姉ちゃん…?」
優汰が心配して声をかける。
「…優汰。姉ちゃん、家に行かない。秀行んとこ…行ってくる」
 優汰は無言でうなずいた。その隣では舞未が彼氏との再会を喜んでいた。