桜*フレーバー

怜央の手のひらにある缶から、ふわりと甘い香りがする。

ふたりで顔を突き合わせ、一緒に匂いをかぐ。


「これって桜の香りなの?」

「さぁ?」

「そもそも桜って匂いなんかする?」


あたしの疑問に怜央も首をかしげる。


「あんま、イメージないよな。とりあえず飲んでみればわかるんじゃない?」

「そうだよね。うんうん。飲んでみよう!」


ティーポットに茶葉を入れお湯をそそぐ。

ここで立ち飲みするわけにもいかず、あたし達はローテーブルに移動した。


そして頃合を見計らって、ポットの紅茶をカップに注いだ。

ふたり同時に口に含む。


しばらくの沈黙の後。


「桜餅だね……」


あたしの言葉に「うん」と、怜央も同意する。

桜フレーバーの紅茶は、桜餅の葉っぱのような香りがして、飲めば飲むほど桜餅を食べているような気分になる。