桜*フレーバー

小さい頃から、ピンクは自分には不似合いな気がしてあえて避けてきた。

だからこの部屋もアイボリーと茶系で統一したシンプルなものにしたし。

あたしのどこに桜の要素があるのよ?

そんなことを考えながら、缶の蓋を上からギュッと握りこむ。


「んー……」


それは思いのほかきつくしめられていて、力を込めてもちっとも動いてくれない。


「いいんだよ。とにかくオレの中では麻衣は桜なの。だからこれにしたんだし。はい、貸して」


あたしの手から缶を奪う怜央。

すると驚いたことに、蓋はいとも簡単に開いた。


「わぁすごい! 怜央って、ちゃんと男の子なんだね」


あたしは感心してそう言っているのに、怜央はなんだか不機嫌そう。


「ちゃんとってなんだよ。お前、なんかムカツク。ヒトのこと、いつまでも子ども扱いしてんなよ」


ブツブツ言う彼のことを、「まぁまぁまぁ」となだめる。


「ねぇ、それより、すごくいい香りしない?」