「ごめん。失恋したばっかなのに、オレの気持ちまで押しつけられたら混乱するよな。ホントは今日ここまで言うつもりじゃなかったんだけど。あーオレ、何やってんだろう」


恥ずかしそうな顔で、髪をガシガシとかいてる。


「つーかもう、結構遅い時間だし、麻衣が大丈夫なら、そろそろ帰るわ」


そう言って背を向けた彼のことをあたしは慌てて呼び止める。


「待って、怜央。あたしうれしかった。怜央からの告白うれしかったよ。だから、まだもう少しここにいて?」

「オレは、いいけど……」


振り返った怜央の瞳をまっすぐに見つめる。



12年間ずっとそばにいてくれてありがとう。

あたしのこと好きになってくれてありがとう。

そんな想いを込めて、あたしは言う。


「あたし、怜央のために紅茶を淹れたい。また一緒に飲もう……」


桜フレーバーのあの紅茶を――。




END