その結果、あたしが知る限り18年間誰ともつきあったことはない。

かといってモテないわけでもない。むしろめちゃくちゃモテる。


線が細く、どこか中性的な雰囲気を持つ彼は、少女漫画の王子系キャラがそのまま現実に現れたような美少年なのだ。

そういうタイプが好きな女子からはもちろんのこと……。実は、男子からも数回告られてるらしい。(ひゃー)

おまけに女性教師からは色目使われてるって噂になってたし。

うちのママだって怜央の大ファンだ。

老若男女問わず、周囲の人をひきつける魅力が怜央にはある。

その気になればいつでも彼女ぐらい簡単に作れそうだし、童貞だって卒業できるだろう。

だけど、それをしないのは、彼の心を射止めるだけの女性がまだ現れてないってことだ。


……なんてね。他人のことをあれこれ分析してる場合じゃない。

実はあたしだって、ピカピカの処女なのだから。


「つーか、話ずらすなよ。オレの童貞はどうでもいいんだって」


ちょっとふてくされたような表情の怜央を、あたしは慌ててなだめる。


「ごめんごめん。冗談だってば。じゃ、話し戻すけど、怜央は本当に魔法使いだってこと?」

「うん」

「じゃー聞くけど。そんな大事な秘密をなんで急にバラそうと思ったの? あたしに。しかもこのタイミングでさ」


怜央は「んー……」とほんの少し考え込むようなそぶりをしてから、のんびりとした口調で語る。


「オレと麻衣って知り合って丸12年とかじゃん? そろそろオレの正体を告白してもいいかなって思ったんだよね」

「ふーん」


あたしは気の抜けた返事を返した。当然、こんなバカげた話、信じちゃいない。