だって、そのDVDは怜央のイメージとはちょっと違う意外なものだったから。


「なにこれ? 『モヤさま』じゃん。怜央って、こういうの観る人だっけ?」


それはお笑い芸人と女子アナが、ただ町をブラブラするだけという番組のDVDだった。

要所要所で棒読みなナレーションが入っていて、そのゆるい感じが絶妙なのだ。


あたしはDVDをセットする。


ベッドに座って、ヨーグルトを食べつつ番組を見る。


何度か観たことはあるけれど、脱力系っていうか、かなりゆるい番組だな~と思った。

だけど、今のあたしにはちょうどいい。


恋愛映画はもちろん、アクションものも今は観たくない。

頭を使うような難しい内容のものもできれば避けたい。


「このナレーションがつぼなんだよなぁ……」


あたしは独り言をつぶやく。

最初はただぼんやり見ていただけなのに、時々、クスッと笑い声まで上げてしまった。


ごまかしかもしれないけれど、DVDを観ている間だけは、嫌なことを思い出さずにいられた。


その日、どうしようもなく落ち込んだあたしの心を救ったのは、怜央が持ってきてくれたDVDだった。