「だったら。……もう入れない」


あたしはポツンとつぶやく。

いつにない怜央の冷たい態度に、じわりと涙腺が緩んで泣きそうになってきた。

だけど、グッと堪えて精一杯強がる。


「もう入れないもん。怜央にそういう気持ちがあるなら、もうこの部屋には入れない」

「わかった……」


怜央が顔をあげる。


「麻衣がそうしたいならそうすればいい。でもさ……」


ふたりの視線が絡み合う。


「麻衣は、きっとオレのことが必要になると思うよ」

「なんでよ……?」

「オレ、魔法使いだから、なんとなくそういうのもわかるんだ」


そう言って、怜央は部屋を出ていった。


――ガチャガチャ


ドアが閉じられたとたん、あたしは乱暴に鍵をして、チェーンまでかけた。

まだ廊下にいるであろう彼に、拒絶の意思を示すために。