桜*フレーバー

「年明けから。オレ、年内に受験終わってたし」

「そうだったんだ……。そんな前から……」


言いながら気づく。あれ? あたし、ちょっと落ち込んでない?


「てか、聞いてないしっ!」

「言ってないし」


玄関でスニーカーを履き、怜央が振り返る。


「あのさ、何でも言わなきゃいけない?」

「え?」


イラついているような目をこちらに向ける怜央。もしかして怒ってるの?


「そっちだって、好き勝手やってんじゃん。一人暮らしすることだって、オレ全然しらなかったし……」


「えっ……あ……うん……」


思わずあたしはひるんでしまう。

途端に怜央の表情も変わる。申し訳なさそうに眉を下げ、口元を手で押さえる。


「……あ、いや。もー、いーや。ごめん、こういうこと言うつもりじゃなかったんだけど」

「ううん。あたしの方こそ、なんかムキになっちゃってごめん……」