あの夏のキミへ

わたしはさっき降りてきた階段を引き返した。

1棟から2棟に渡る。

3棟に差しかかる廊下の少し手前に職員室があって、黄色い明かりが灯っていた。

まわりが薄暗いせいでいつも以上に明るく感じる。

夏休みだからといって先生たちも仕事が休みになるわけではないから、何十人かの先生があの明かりの中で仕事をしていることだろう。

ドアの横までそろっと近寄る。

さて、これからどうするか?

私服で来てしまったのだから、見つかるとなにかと面倒だ。

しゃかみながら忍び歩きで行くか?

それとも標高突破しちゃう?

ごたごた考えているうちに、中から先生たちの話し声が聞こえてきた。

「最近田川先生のクラスはどうですか?」

田川…田川邦弘(クニヒロ)。

私の、2組の担任だ。

30代後半。

いつもジャージを着ていて体格がいいことから体育教師と思いがちだが、意外にも担当教科は数学。

女性の先生が声をかけているが、わたしはあまり先生には詳しくないため誰だかはわからなかった。

「まずまずってとこでしょうかねー」

よく通る声が聞こえた後に飲み物をすする音が聞こえた。