キーンコーンカーンコーン

「あ、もう昼休みか。」

俺はノートをとっている状態から顔を上げた。

隣の席を見ると、佐々木はうつ伏せていた。

「おい佐々木、ノートとったのか? 入学そうそう寝るなよ。」
話しかけると佐々木はゆっくり起き上がった。

「う~ん、ふぁ~~っっとぉ、よく寝たー。」

佐々木は少しのびをすると、すぐに立ち上がった。

「きっくー! 食堂いこうぜ!飯食いたい!」

と、俺の肩を揺さぶりながら、少々強引に頼み込んだ。

「わかった、わーかった。だからやめろ。」
そう言うと、俺も席を立った。

「ところできっくぅー、食堂ってどこだ?」

「あー、俺知ってる。一階の東の方だ。行こうか。」

食堂は初めて学校に来たときに一回見たことがあった。

そこまで佐々木を連れて探してみる。

「あ、あれじゃねーか?食堂!」

教室から食堂まで約3分。

まあまあの距離だ。

佐々木は初めて食堂に来るから少しテンションが高い。

「意外とでけぇよ!しかもラーメンがある! ラーメン!やッべぇ!」

「ラーメンくらいどこでもあるだろ。」
佐々木がはしゃいでいるとき大抵俺は冷静だ。

だが、その後すぐ俺は少し戸惑った。
何故なら食堂に、あの伊尾谷 樹理がいたからだ。

(思い出した。あの人だ。)

そう思うと、すぐに伊尾谷の方に向かった。

向こうも、こちらに気づいたようだ。
だが、こちらが早かった。

「伊尾谷さん?」

「は、はいっ!」

「昨日はごめんっ!」
深々と頭を下げるが、伊尾谷は今何が起こっているかよく理解ができていない。

「…………へ?」

昨日フラれたはずの人に、食堂で急に謝られると、誰でも訳がわからなくなだろう。

「な…なんで謝ってるんですか? もしかして昨日の……」


「そうだ!昨日のことだ!」

伊尾谷の言葉に言葉をかぶせながら説明を続けた。

「昨日のあの手紙! 実は今日の朝に気づいたんだ。」

「えっ!? そうなの!?」

伊尾谷が理解できなかった部分が、今の説明で昨日来なかった理由や、謝られた意味全てが繋がった。

「決して君のことが嫌いだとゆう訳ではない!」

その言葉に、伊尾谷は安心と恥ずかしさで顔を赤らます。

「とゆうことは…?」

少しだけ希望が出てきたと思い、聞いてみたが、

「だけど、お付きあいはできない。俺は伊尾谷さんのことを何も知らない。」

フラれてしまった。

伊尾谷はショックを受けたのか、顔の表情が無に変わった。

「そっか。やっぱり…そうですよね!」
と、吹っ切れたようにまた笑顔を取り戻し、言葉を続けた。

「でも私はあなたが好きなんです。恋人とは言いません。私の友達になってくれませんか?」

「…わかった。今日から伊尾谷さんの友達だ。」

高校に、友達があまりいないのと、彼女の言葉を二回も断ることが出来なかったのか、伊尾谷の二回目の願いを受け入れた。

「あ、伊尾谷さんじゃなくて、いおちゃんって呼んでください。そっちの方が慣れているので。」

「じゃあ、いおちゃん、友達なんだから敬語じゃなくていいんじゃないか?」
と、話しているとなかなか会話が弾む。

いおちゃんとはすぐに馴染めた。

「え?菊池くん、弓道部に入るの!?」

「ああ、なんか引かれるんだよな、弓矢。いおちゃんは何部に入るんだ?
あ、後、啓祐でいいよ。それか、佐々木みたいに"きっくー。"で、いいよ」

「あ、わかった!

吹奏楽部だよ!」

そんな楽しい会話は終わり、昼休みも終わろうとしていた。

「じゃあね~」

「また明日~」
と言い、教室まで帰ろうとしたその時、大切なことを忘れていた。

「やべぇ、佐々木を一人にしたままだった。」

教室に戻ると佐々木はすぐにこちらに来て、俺の肩を組んだ。

「なぁきっくー、食堂でいきなりいなくなるとはいい度胸してるじゃねーか~」

その後、佐々木を説得するのに10分ほどかかった。