試写会が終わって、秋瀬が真っ赤な顔しながら「とっ、とりあえず昼メシ食うか!」と言った
いくらなんでも動揺しすぎだろ…
昼メシ王道のファーストフードを買ってフードコートで食事をとる私たち
…沈黙が長い
ねぇ!秋瀬ったら喋んないの⁈なんか喋りなさいよ‼︎
…私?対象外だよ この場合
秋瀬を睨みながらハンバーガーを食べる私
あ、秋瀬が顔をこっちに向けた!
と思ったらすぐ顔を伏せる
しかも、赤面付きで
お見合いしてんのか‼︎私らは‼︎‼︎
遂にこの空気に耐えられなかったのか
「あっ、あのさ‼︎」
秋瀬が話題を持ちかけてきた
「………………」
その顔はみるみる赤くなり…
「だぁっ!もうダメだっ‼︎‼︎」
秋瀬はギブアップした
そして、勢いよく机に頭をぶつける
「いってぇ‼︎‼︎」
ちょっと、なにそのドジっぷり!
気づいたら秋瀬がじっと私を見ていた
何よ!
口では言わずに心の中で呟く
秋瀬はそんな私の気持ちに気づいたのか口を開いた
「…お前、笑ってるのか…?」
…え
秋瀬に言われて気づいた
私…笑ってる…!
あのとき以来、笑ったことなんてなかったのに……
「なぁ、聞くけど…」
さっきのが嘘だったかのように秋瀬は真剣な顔をして聞いてくる
「お前は何で顔を隠すんだ?お前は何で人と接しようとしないんだ?」
…それは1番聞いてはならない質問
「なぁ…別に俺は…」
「うるさいっ‼︎ほっといてよ‼︎‼︎」
一瞬、静まり返った空間
秋瀬は目を丸くしていた
でも、1番驚いたのは私だった
今…喋った……の?
でも驚く暇もなく私はその場から席をたった
「っ!おい‼︎」
追いかけないでよ…!
もっと惨めな気持ちになるじゃん!
ただでさえ、泣きそうなのに……
ショッピングモールを出たところで私は秋瀬に手首を掴まれた
「…やっと…捕まえた……!」
息を切らしながら秋瀬は言う
「なぁ、さっきの質問…どうなんだ?」
私は首を振る
すると秋瀬は少し残念そうな顔をした
「…そうか」
秋瀬は手を離した
「無理して言わなくてもいいんだ……ただ、俺はお前の味方だから!他の誰かがお前を信じなくても、俺はずっと信じてるから‼︎…これだけは覚えておいて欲しい……」
秋瀬……
そんなこと、初めて言われた……
「じゃあ、な」
そう言ってその場から立ち去る秋瀬
「ぁ…」
思わず彼の手をとってしまった
驚いた顔で振り向く彼
変われるのかな…私
今、ここで秋瀬に言ったらどうなるのかな…
きっと、『カレ』を裏切ってしまう形になるかもしれない
でも、でも……!
「あっ…あのね…!」
私は変わりたい
