私は大きな溜め息をつくと、トイレへ行こうと席を立つ。


未だに頬を膨らませている氷河君が可愛くてしょうがなくて、もはや泣きそうになっていたからだ。

涙腺が緩む。
泣いてしまえと私の中の悪魔が囁く。


でも泣いてはいけない。

私が泣いたら氷河君はきっと驚いて、そして困る。
慌てる氷河君は可愛いが、好きな人が困る姿を見たくはない。


「氷河君のばか!!鈍感!!好き!!」


私はそれだけ叫ぶと顔を隠しながら音楽室へと走った。

掃除中の一組や二組の生徒がちらほらと見てきたが、その視線を振り払い音楽室の扉を開く。



「ちはるこちゃ〜ん!!氷河君がさ〜!!」

私は音楽室でピアノを弾いていた女子生徒にガバッと抱きつく。