私お酒飲めないのに…

「すみません。烏龍茶一つ。」

「はい。」

「紗藍さん、飲まないの?」

「えぇ…」

「前はよくのんでたろ?」

「はぁ…昔は昔でしょ。」

「あぁ…」

「ある時から飲めなくなったのよ。毎年その日出来事があった日に酔いつぶれるの。」

「課長、そうなんですか?紗藍まさか…」

「あなたに関係ないでしょ?それと課長。関係のない人にプライベートな話をするのやめてもらえます?」

「あぁ。ごめんね。」

「はぁ…」

やっぱり飲まずにはいられない。隣に晃がいるなんて。信じられない。

「あれ?紗藍さん、飲むんですか?」

「えぇ。」

「大丈夫ですか?」

「えぇ。」

「おい、飲めないなら無理するなよ。」

「あんたに心配される筋合いない。」

「まぁ、前はあんなに飲んでたんだから大丈夫か。」

「紗藍?本当に大丈夫?」

「課長。周りを気にしてくれます?私たち今プライベートじゃないんです。」

「あっ…そうね。ごめんなさい。」

「あぁ。」

「だいぶ酔ってるんじゃないですか?」

「代理…大丈夫です…」

「…あの。お手洗いに行って来ます。」

「ええ。」

「…あの。僕も行って来ます。」

(紗藍さん…宮本さんと何があったんだ?)



「おい紗藍!」

「…」

「おい。」

腕を掴まれる。

「まだ怒ってるのか?あの時は悪かった。だけど俺…まだお前が好きなんだ。」

「あんな風に…他の女のとこへ行ったのに?」

「あれは違うんだ…もう芽衣(めい)とは別れた。」

「だから?女がいなくなってさみしくって?私に会いに来た?」

「違う!俺のじいちゃんがここの会社に入れっていって入ったんだ。紗藍がいるなんて考えもしなかった。」

「私のことが好き?私だってね。あんたのことずっと忘れられなかった。新しい恋だって、恐ろしくてできなかった。だけどね。私には今、好きな人がいるの。やっとあれから始めて人を好きになれたの!うまくいきそうなの!だから…邪魔しないで!」

思わず涙が溢れだした。

「ク代理か。」

「…えぇ。そうよ!分かった?私の言うことを聞いて!」

「嫌だ!」

「私を困らせないでよ!私の事が好きなら!」

「あいつには…絶対わたさない!」

「傷ついてもいい…そう思えたのよ。私がフられても、あんたのとこにいくことはないわ!」

泣きながら叫んだ。

「どうして…」

晃も少し泣きながら叫んでいた。

「紗藍さん!」

「…ク代理。」

代理が話を聞いていた。
泣いている姿も見られてしまった。
代理とは反対方向に顔を向け、泣いているのを少し隠した。

「女を泣かせるのは、男として最低だ。」

「こっちだって理由があるんですよ。これは僕たち2人の問題だ!あなたには関係ないでしょう!」

「紗藍さん。まだ経営室の仕事が残っている。手伝ってもらえますか?」

一秒でも早くその場から去りたかった。

「えぇ。分かりました。」

「もう二度と女を泣かせるな。」

「…」



「紗藍さん…」

「すみませんでした。」

「いや…今日は送るよ。」

「そんな…いいです。」

「もう夜遅いんだ。一人じゃ危険だから。」

「いえ…大丈夫です。さっきはありがとうございました。」

「本当に大丈夫?気をつけて。」

「さようなら。」


フラフラする。

「あっ…」

「紗藍さん!やっぱり送って行きます。いや、送らせてください。」

「…大丈夫です…」

「ダメだ。」

ガシッ

腕を掴んで歩いていく。
何の会話もなく…

「あぁ…フラフラして歩けないですね。おぶります。」

「うーん…」

「よいしょっ…」

「代理…代理…」

「は、はい?」

「だーいり…代理…」

「寝てますか?」

「起きてまーす…だーいり…♪」

「代理の歌ですか?(笑)」

「気持ち悪い。」

「はっ?」

「降ろして‼︎」

「え?」

「んんっ!おえっ…」

「植木に⁈」

「はぁ…スッキリした。」

「大丈夫ですか?」

「ヒヒッ…ク代理。ク代理…?」

「なんですか?」

「好きです。」

「えっ?」

「好きです。なんでかわかりません。好きです。」

「…背中に乗ってください。」

「はーい。」