ク代理…
何でそんなに優しくするんですか?
優しくされすぎても、不安になります。
また傷つかなければなりませんか?
どうすればいいのですか?

「あ、そうだ。今日は課長のおごりだから、たくさん食べて飲んでね。遠慮せずに。」

「あ…はい。」

「おお、ク代理!主役が遅くて待ちくたびれましたよー。」

「すみません。」

「あれ?紗藍も一緒だったの?」

「あぁ…お店の前で一緒になって。」

「あ、そうなの。紗藍、ここ座って。」

「はい。」

「紗藍。なんかさ、代理と課長、仲良いわよね。」

「え?」

「皆言ってるわ。」

「そう?」

「うん。」

そうなの?
まさか…

少しショックを受けながら、代理の方を見ると、代理と目があって。
少し微笑んで、お酒をついでくれた。

「あ…すみません。ありがとうございます。」

「好きなだけ食べてね。」

「はい。」

代理にお酒をついでもらえるなんて。
嬉しくてたまらない。

「皆さん。今日から新しく入った社員の、宮本晃(みやもとひかる)さんです。一応、私たち経営・サービスグループの地位が高いお方なので。失礼のないように。」

晃?
嘘でしょ?どうして…こんな時に。
どうしてまた私の前に現れるの?
自分から去って行ったくせに。
いつも勝手よね。
去る時も。現れる時も。自由でいいわね。
姉さんは?
私たちのこと知ってるでしょ?
よくも笑ってられるわね。
よりによってどうしてこのグループなの?

「課長。そんなこと言わないでくださいよ。ハードルが上がります。まだ僕は新人なんですから。皆さんの方が先輩ですよ。」

「はいはい(笑)」

「あぁ…始めまして。宮本晃です。経営・サービスグループのチーム長をやらせていただきます。頼りない新人ですが、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いしまーす!」

「…あ。」

「…あぁ。」

「紗藍か?」

「えぇ。そうよ。」

「なに?知り合いなんですかー?」

「えぇ。」

「さ、紗藍。少し話があるのを思い出したわ。ちょっといい?」

「はい。」



「あのね、紗藍。これは…」

「どうして‼︎私たちがどんな関係か…どんな別れ方をしたか…最初から最後まで知ってるくせに!あんまりじゃない!」

「違うのよ、紗藍。」

「何が?何がどう違うのよ!」

「分かった。謝るわ。だけどね、社長の命令なのよ。あなた知ってる?晃さんは…社長の孫なのよ。だから…何が何でもこの会社には入らなければならなかったの…空いてるのが私たちのチーム長しかなかったの。お願い。理解して。」

「理解?社長の孫?だとしても、事前に教えてくれたってよかったでしょ?」

「私が助けるから。」

「もう姉さんは信じられない!」

「紗藍。」

「もう…姉さんなんかじゃない。」

「紗藍っ…」

「あっ…」

振り向いた先には…晃がいた。

「紗藍…」

「…」

「紗藍。食事の席に戻りなさい。」

「はい。」

「おい、紗藍!」

「…」

どうして私はこんなに辛いことばかりなの?
少しくらい…楽にさせてくれたっていいでしょ?