もう17:00かぁ。
今日は早く帰らないと。

「課長。今日はお先に失礼します。」

「えぇ。今日は大切な日でしょ?早く帰って。気をつけてね。」

「はいっ。ありがとうございます。」

課長の名前は桜井優花(さくらいゆうか)。
中学生時代の私と優の一つ上の先輩。
部活も同じですごく仲の良かった先輩と、去年入社して再開できて…
とても嬉しかった。
今日が花音の誕生日ってことも知ってる。


ケーキは買った。
後は…そうだ。
お花を買っていこう。

花音22歳になるから…
ピンクのカーネーションを22本にしよう。

「すみません。ピンクのカーネーションを10本ください。」

「えっ?」

10本?ここには30本しかないのに?
どうしよう。

「あの…私もピンクのカーネーション…欲しいんです…」

「えっ?何本?」

振り向いたその人は…
すごくハンサムな顔をした、
背が高い男の人。

「に…22本…」

「あぁ…どうしようか。すみません。ピンクのカーネーションはここにあるだけしかありませんか?」

「ええ。」

「どうします?」

「僕は10本じゃなくてもいいんだ。誕生日じゃないから。30本しかないから…22本欲しいんですよね?なら僕は8本。もらいます。」

「いいんですか?」

「あぁ。誰かの誕生日なの?」

「えぇ。親友の。」

「花をプレゼントするなんて…素敵だね。親友もきっと喜ぶよ。」

「いえ…」

「じゃあ…お先に。」

「はい。ありがとうございました。」

いい人だったなぁ。
顔もハンサムだったし…
また会いたいなぁ。


「ただいまぁ。」

「Happy Birthday!!花音、おめでとう。」

「ありがと〜♡紗藍大好き!」

「22歳おめでとう!」

「うん!わぁ…この部屋の飾り、また全部紗藍がやったの?」

「うん。」

「本当すごいよ!いつも超可愛い部屋になってる♡」

「ご飯食べよう。」

「うん!」



「じゃあケーキね。」

「うん。」

「Happy Birthday to you♪…」

「フーッ。」

「おめでと〜!」

「わぁ、ピンクのカーネーション!まさかこれ、22本ある?」

「さぁ?数えてみて?」

「19 20 21 22…すごい!紗藍ありがと!」

「いーえ。」

「可愛い♡」

「あ、そうそう。この花買いに行ったらね…」



「何それ?すごいかっこいいじゃん!」

「でしょ?また会いたいなぁ…」

「ちょっと紗藍。ひょっとしてその男の人に惚れたとか?」

「ちょっと!冗談はやめてよ。でもまぁ…いい人だった。」

「そろそろいいんじゃない?」

「えっ?」

「紗藍はあれから恋愛してないんだよ?もう2年も経った。恐いかもしれない。だけど、前に進まないと何も始まらないよ?全部の恋が、あんな結末とは限らないよ。」

「うん…分かってる。でもいい人に出会えるまではね…」

「いい人?そんなのいつ出会えるかわかんないよ。周りにいる人が、急にいい人に変わるかもしれないよ。チャンスは逃さないで。」

「周りにいる人が…?」

「うん。なんなら、その男の人をいい人にしちゃえばいいのよ。」

「そんなの無理。いつ会えるかも分からないし。」

「そこが欠点なのよね。」

花音の言うことは正しい。
私が勇気を出せるような…
そんな人に出会えたら…
もう出会ってるのかな?