「それにな…」
そう言った圭人君は腕を緩めて私を目を見つめる。
「みんなお前を必要としてる。だけど、誰よりも俺が…染谷海が必要なんだよ。」
私が…必要?
「え……私なんかを、どうして。」
すると、少し苦笑いして私を見下ろした。
「本当は、もっとゆっくり伝えるつもりだったんだけど…」
そう言うと真剣な表情になる。
「俺は、海が好きだ。」
好き?圭人君が…私なんかのことを?
「海は私なんかって言うけど、なんかじゃない。海だからこそ好きなんだよ。俺は。」
そしてふっと微笑んだ。
「だから誰よりも海が必要だし、俺は海のこと一人ぼっちにしない。というか絶対にさせない。」
嬉しい。いや、嬉しいの一言じゃ表しきれない。この感情はなに?
伝えたいのに、分からない。どうして…。
「私………あのっ…。」
言葉が見つからなくてモヤモヤする。
このあったかい気持ちを言いたいのに、なんて言えばいいのか分からない。
オロオロしてる私を見かねたのか、またポンポンと私の頭に手を置いた。
「焦らなくていいよ、俺が言いたかっただけだから。」
そう言って少し寂しそうに笑う。
違うの。そんな顔させたくない。この気持ちを伝えたいのに分からないの。
そう言いたいけど自分でも分からないことを伝えても余計に分からなくなるだけだ。
悩む私に彼は「さ、そろそろ帰ろうか。」と言って私を立ち上がらせる。
そして歩きながら私に囁いた。
「俺の気持ちはずっと変わらないから。信じて?」
