もう我慢できなかった。
ポタリと膝の上に涙がこぼれ落ちる。
さっき沢山泣いたはずなのにまだこんなに溢れるのかと思うほど止まらなかった。
すると、ふわりと何かに包まれると同時に視界が暗くなる。圭人君が抱きしめてくれたのだ。
見た目はすらっとしてるのに意外と分厚く広い胸板。暖かい体温。そしてお日様のような匂り。
その全てに安心した。
「…海はさ、自分のこと偽物だって言うけどそれは違うよ。」
「え…?」
急に言われた言葉に驚いた。
偽物じゃない?そんなはずない。
「だって、俺の目の前にいるのは紛れもない染谷海だよ?記憶があるから本物、ないから偽物なんてことは無いんだよ。どっちも本当の染谷海だろ。」
抱きしめながら諭すようにそう優しく囁いた。
「4人で沢山遊んだのも、係の仕事2人で頑張ってるのも、怪我した俺にハンカチを貸してくれたのも、偽物なんかじゃなくて本当の海だよ。」
胸がギュッて縮まるような感覚になり、思わず圭人君をさっきより強く抱きしめた。
嬉しかった。存在を認められたような気がして。
「それに、俺は昔の海を知らないから分からないけどきっと知ってた人達は戸惑っただけなんじゃないかな。どう接すればいいのか悩んだんじゃない?そのくらい、海のこと大切に思ってたんだよ。
だから必要されてないなんてことは無いんだよ。みんな海のこと考えてたんだから。」
ポンポンと頭に大きな手を乗っけてくれる。
その手が、優しい声が、包み込む体が、私を温かい気持ちにさせた。
なん度も味わった、少し痛いけど温かい気持ち。
なんだろう。もう少しでその正体がわかるきがする。
