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今までの事を一通り話終えた私は思わずほっとため息をついてしまった。
ずっと後ろめたかったことを言えた開放感と安心からくるものだったと思う。
圭人君は、私の話を聞いてどう思ったかな。同情するのかな。重たがられるかな。
気になって、ちらっと、ずっと黙って話を聞いていた圭人君を見ると暖かい目をこちらに向けていた。
どうして…いつから、私の事をそんなに優しい顔で見つめてくれていたのだろうか。
ずっと下を向いて話していたから気づかなかった。
もしかしたらずっと見つめてくれてたのかもしれない。
「こんな重い話を聞かせてごめんね。でも、あんなに暖かい言葉をくれる圭人君をこれ以上騙したくなかったの。」
ここまで言ったらちゃんと伝えたい。
彼の優しい瞳をまっすぐ見つめる。
途中で泣いたりなんかしない。
勇気を出すんだ私。震えてる場合じゃないんだぞ。と自分を言い聞かせた。
「記憶のない偽りの私にこんなに優しくしてくれて…私、すごい嬉しかった。でも、いいのかなって…。本当の私じゃない私と仲良くしてくれていいのかなって。ずっと不安だった。
圭人君だけじゃない、杏ちゃんや和哉君、いろんな人たちに嘘をついてるみたいで嫌だったの。
でも、私の記憶のことを言ったら中学のときみたいにまた皆いなくなっちゃうんじゃないかって!またモノクロの世界になるんじゃないかって!やっと…やっと色づき始めた世界が、もどってしまうんじゃないかって…怖くなった。」
泣かないって決めたはずなのに、鼻の奥がつんっとなって視界がぼやける。
「ごめんね圭人君…今まで言えなくて、騙してて…ごめんね。」
