私の心を彩る君




半年後、異変は起こった。






私はあの時に記憶を失ってからそれまでずっとそうなってしまった理由をお母さんに聞いてなかった。


何故なら、聞かないでと母の目が語っていたから。


でもそれは私自身の問題だし、聞けば思い出せるかとしれないと思ってつい聞いてしまったんだ。


結果的にそれがお母さんの今まで張りつめていた糸を切ってしまうことに気付かずに。




「お母さん。」

「ん?」

「あのさ、私、どうして私記憶をなくしちゃったの?記憶を無くすほどのことって何が起きたの?」

「……………。」

眉間に深く皺を寄せた。


やはりダメなのかもしれない。でも記憶を取り戻すためにも知りたい。



「えっと、それが分かれば記憶も戻るかもしれないな〜なんて思って。」

「だめよ。」

「え?」

今度は即答だった。

何故?どうして教えることが出来ないのか。

「海に教えることはできない。」

「なっ。どうして?」

「だめと言ったらだめよ。」


どうしてそこまで意固地になる必要があるのか。

記憶を失った当事者は私であって母ではないのに。


「なんで?私のことだよ?自分で知ろうと思うことがそんなにいけないの?」


この時の私はきっと焦ってたんだと思う。


記憶の戻らない私は"染谷海"ではない。お前は"染谷海"にそっくりなだけで他人だと言われているような気がして、必死に元の私に戻りたがっていた。