『確かに淳て、すごく優しかったよね…』

『あたしらの差し入れも、お腹いっぱいになりながらも食べててくれたし…』

『ちょっとうさんくさい王子スマイルもあったけど、そこには優しさもあった気がする……』

『俺らも、一緒にいて悪い気はしなかったけど……』

皆の言葉がつまらなかったのか、金髪頭が俺の横に来て腕をつかむ。
正直力が強くて痛いし、コイツに触られたくない…


『おいおい嘘だろ?こんなあっさりこいつのこと許すの?俺らのこと騙してたんだぜ?告白してた女子の気持ち踏みにじったんだぜ!?』


『それでも…振るときはホントに悲しそうに、でも告白されて嬉しい気持ちを伝えてくれた。』


や、やばい…
涙出そう…


「っていうかさ、君、僕の淳ちゃんに触らないでくれる?」


そう言って俺を自分の方へ抱き寄せる涼太。


「りょ…た……俺…うれし…」

俺は涼太の胸で泣いていた。


『淳…私達、酷いこと言ったよね………ホントにごめんなさい。』


俺に謝る皆…
ちがう……
違うよ…

「謝らなくちゃいけないのは…俺だよ…」

涙を拭き皆に謝り返す。


『淳……悪いコトしたって思うなら、明日からちゃんと女子の格好してきてほしい。』


『偽りの格好じゃなくて、ちゃんと、女子の制服。』


「え…でも俺…女子の制服持ってない…グズッ」


『あたしお姉ちゃんと同じ高校で、お姉ちゃんもう卒業したからあるよ』

『お前ら何勝手に解決してんだよ!鬼森ムカツクんだよ!何も苦労しないで、こんなにも早く皆に受け入れられて……だいたい、バックに谷がいんのがまたムカツク!!』


「え…涼太昔何かあったの?」

「あぁ、あのね、中学3年生の頃あいつ含め複数の男子に囲まれたんだけどさ、僕空手やってたから返り討ちにしてやっただけだよ?」


空手って、俺聞いてねーし。


「っていうか、金髪頭。お前淳に謝れよ。机汚したり殴ったり、ざけんなよ?次ぎやったら俺らも黙ってねーぞ」


『チッ…悪かったな!』


「いや、いいよ。いいきっかけだったのかもしれない。ありがとう」


俺は笑顔でそう言う。


『うっ……お、俺の名前は一ノ瀬 夏樹(イチノセ ナツキ)だ!!俺の名前、覚えとけよな!!』


「は、はぁ…覚え…とく?かな」


な、何だ?
何でいきなり名前なんか……


「淳ちゃん、あんな奴の名前なんか覚えなくていいんだからね?」


「あ?……もう忘れた……何だっけ!?」


『あはは!淳たらいいキャラしてる!』


これは…笑っていいのか?

まぁ、この事件が片付いたのは

「西崎さんのおかげだよ。ありがとう。ホントに、ありがとう。」

『仮は返したよっ』


西崎さんが笑顔になり、俺も自然と笑顔になれる。
まさか、こんなに早く事がおさまるなんて、思ってもみなかった。

もしかしたら涼太とわかれるかもしれないとも感じた。
これからすごく大きな別れがあるのかもしれないな…


とりあえず今は、この幸せをかみしめていこう。



俺は帰り、制服を持っていると言う女子の家へ涼太と寄り、貰って帰っていた。


「これからは、淳ちゃんと普通に恋ができるんだね…」

「何だそれ…今までだって抱きついたりしてたじゃねーかよ…」

「そうじゃなくてさ、人目を気にして手をつないだり、キスをしたりしないで、堂々とできるのが嬉しいんだよ…」

「だな…俺も、嬉しいよ…。涼太、今日、家によって母さんに会ってやってくれねーかな?母さんずっと会いたいって言ってたし、俺も会わせたいんだ…」


「うん、いいよ」


帰ったら母さんに全部話そう。
全部知ってもらおう。





「母さん、ただいま」

「お邪魔します…」

「あら、淳お帰りー!それと…あなたが谷君でしょ」


にやけながら言う母さん。


「当たり。母さん、話があるんだ…」

「とりあえず上がりなさいよ」


俺らは家に上がり、テーブルの椅子に3人で座った。


「で、話って何?できちゃった結婚とかなら許さないわよ?」

「あ、そこは大丈夫です。僕達そういうのまだないですから」


何でキラキラな笑顔なんだよ……
こっ恥ずかしいな、もぉ。


「あらそう?じゃぁ何?」

「実はさ、後夜祭の時、俺と涼太が空き教室に一緒にいるの見られてて、今日ホモだって言われたんだ…」

あえてキスのことは言わん。

「それで、もうホントのことを言うしかないっていう話になり、淳ちゃんが女だということを皆に告げました。」


「そう…あたしの…せいよね。一時の感情であんなことするんじゃなかったわ…。淳、ごめんね。」

「母さんは悪くないよ。俺だって断ればこんなことにはならなかったし」


「っていうか淳、あなた左頬赤いわよ!?何があったの!?」


「すみませんお母さん。僕が不甲斐ないばかりに、男子に平手で殴られてしまいました…」


「お前のせいじゃないだろ」


「淳、あなたならそんなの反撃できたはずよ?」


「もしあそこで俺が殴ってたら停学じゃ済まないかもしれないだろ?」


「それもそうだけど……はぁ。娘の顔をこんな風にされて…母さん辛いわよ…」


「でも、殴った本人も謝ってくれたから。それに、これからは女として学校行くし!あいつのおかげでいいきっかけができたんだ!」


「そこが淳のいいところでもあるわね。涼太君、これからも、淳の隣にいてやってね?この子昔から友達少なくて、貴也くんしかいなかったのよ。でも高校に入ってやっと優ちゃんていう友達が増えて、涼太君が現れてくれた。母親として、こんなに嬉しいことはないわ」


「大丈夫ですよ?もし淳ちゃんが嫌だと言っても離しません。」


な、何か嬉しいけど恥ずかしい…

俺の顔が熱くなっていく。


「ちょっと淳?赤くなってないで夜ご飯作ってちょうだい?その間にあたしはこのイケメン君とお話してるから」


「いいけど…変な話すんなよな?」





俺の秘密はもう終わり。
これからはちゃんと、本当の姿で生きていく。

言葉だってちゃんと直して女の子になる。
だから、これからもよろしくな、貴也、優。
そして、最愛の涼太。





★終わり★