「ち…違うの……私が悪かったの………」

泣きすぎて少し息が乱れてる。
休ませた方がいいかもな…。

「涼太、俺西崎さんのこと保健室まで運んでく。お前は貴也たちにこのこと伝えて。」

「分かった」


俺達はそれぞれの行動に移る。


俺は西崎さんを保健室に運び先生に状況説明をした。

「じゃー後はあたしが見てるから、鬼森君は戻っていいわよ」

「わかりました。よろしくお願いします。」


教室に帰ると授業の途中だった。
遅れた理由は優が説明しておいてくれたらしい。


これからどうするか話さなきゃな……




帰り、俺らは4人で教室にいた。

「まさか女子があんなにキレるなんてね……」

「淳は告られてもオッケーしないけど、文化祭は一緒にまわるかもしれないからじゃねーの?」

「それだけ淳ちゃんがモテてるってことなのかな…」

「そんなのどーでもいいよ。今は西崎さんの事考えなきゃ。さすがに女子もこれ以上手は出さないだろうけどさ…」

「日常生活においてはあたし一緒にいるから大丈夫よ」

「できれば女子と西崎さんの仲が文化祭までに戻ってくれればいいんだけど…」

「それはこれから生活する上で見ていったほうがいいね」


俺らは一旦家に帰えることにした。

「淳、俺優のこと送ってくわ」

「あぁ。わかってる。じゃぁな」


俺は貴也と優に別れを告げた。


「今日は僕と帰ろっか」

「あぁ。だな…」

「淳ちゃん。言っておくけど、淳ちゃんは悪くないんだからね?」

俺の心を見透かしたように言ってくる涼太。
俺は悪くない。
そんなのわかってる。
わかってるけど…

「俺が原因で起こったことなのに気にしないなんて無理だよ…」

「そうだよね、ごめん。」

涼太は俺の気持ちを考えた上で謝ってくれた。
ホント、優しすぎるよ、涼太。


「じゃぁ、ここでいい。ありがとな」

「あ、淳ちゃん待って」

振り向き行こうとした俺の手を引く涼太。

「ん、何?」

「好きだよ」

そう言って涼太は俺の額にキスを落とす。
こんなのが嬉しいなんて…俺、変なのかな…?

何か今日は素直に甘えたい気分だ…


「家…寄ってけば?今日母さん仕事で帰ってこないし、夕飯食べてけよ」

「え、いいの?」

「別に、飯ぐらい作ってやるよ」


涼太は優しい笑顔で『ありがとう』といい俺の部屋に来る。
貴也は帰ったんだろうか…
いや、今は優と一緒かな。


そんなことを思いながら俺は部屋の扉を開け中に入る。


「へー、淳ちゃん家って以外と片付いてるんだね」

「何だそれ。俺は綺麗好きなの。」

「今度ボクの家にもおいでよ」


涼太はニコニコしながら言う。
そう言えば俺、コイツのこと何も知らない。
今まで何も聞かなかったし、涼太からも言わなかった。


「お前どこに住んでんの?」

「僕?僕はね、マンションに一人暮らしだよ?」

「…………………は?え、お前高校生だよね?」

「うん!もちろんさ!」

「金は?」

「え、だって僕の両親お金持ちだし」


なぁにさらっと自慢してんだこの僕っ子野郎。
ってか、両親いるのに一人暮らし?
何で!?

「何で親いんのに一人暮らしなんだよ…?」

「んーとねー、まずさ、上がって座らせて?」

「あ…」

そう言えば玄関で立ち尽くしたままだったな。


「すまん。上がっていいよ。鞄は適当にそこら辺に置いて?」

「お邪魔しまーす」


涼太はテーブルの椅子に座り、その横に鞄を置く。

えっと…
まず飲み物と、あとは…お菓子?

俺は適当に飲み物とお菓子をお盆の上に乗せ涼太に渡した。 


「こんなのしかないけど、よければ…」

何か…何だこれ。
めっちゃ緊張する。


「くすっ」

「な、何…」

「いや、淳ちゃんてそこら辺の女の子よりも乙女なんじゃない?」

「は!?」

「だってさ今、緊張してるでしょ」


テーブルにある俺の手の上に涼太の手が重なった。
それにビックリした俺は微かに震える。
それを見てまた笑う涼太。


「あーもー!いいからお前の話しろよ!」

「ふふっはいはい」


その後すごく楽しそうに涼太は喋った。


涼太の話しによると、今住んでいるマンションの経営者がお父さんらしく、お母さんは繁華街のお花屋さんで働いてるらしい。


で、涼太が一人暮らしをしてみたいと言い出したら親がそのマンションに1人で住んでみたらどうだと案を出したため、今現在の状況にあると。


「お前の親ユルいな……」

「そ?普通だよ?あとね、お父さんアパートも貸してるんだよねー。それには僕もビックリだよ!」

「ってことは、結構いい暮らししてんのな…」

「あ、でも僕だってバイトはしてるんだよ?」

「え!?何それ初耳………あー、もぉ。」


俺はうなだれテーブルに突っ伏した。


「どうしたの淳ちゃん?」

「俺お前のことしらなすぎて嫌になる……」

「なーに可愛いこと言ってんのさ、これから知ってけばいいんだし、よくない?」

「だってさ、今まで俺自分のことばっか話してて子供みたい…」


こうやって話しててもっと涼太のこと知りたいって思うと、何か、涼太のこと好きなんだなーって、実感する。
それを考えると恥ずかしくなり顔が火照ってくる。


「何顔赤くしてんの?襲うよ?」

「もーお前うるさい。ってかバイトどこでやってんの?」

「お母さんが働いてるお花屋さんだよ?お手伝いしてるのっ」


何か俺涼太が可愛く見えてきた。
目遊んだかな?
やばいよね。
俺より女子力たけーし。
もういっその事男と女逆転してしまおうか。

「え、それはやだなぁ」

「俺声に出てた?」

「ばっちし。」


とりあえず腹減った。


「夕飯何食いたい?」

「淳ちゃんが作るものなら何でもいー」

「何でもいいが一番困るな…」


冷蔵庫の中には使えそうなのがたくさんある。
ご飯もあるし…
うーん…

ハンバーグ?


「涼太、嫌いなものとかある?」

「んー、ナスとゴーヤと人参。」

「ガキかよ…じゃぁいいな。ミニハンバーグたくさん作るから」

「ホントに!?僕ハンバーグ大好き!!」

「もう一回言っとくわ。ガキかよ。」


えーっと、まず手を洗って…

俺はハンバーグを作る準備から始めていく。


よし、空気抜くか!


「淳ちゃん僕もそれやりたい!」

「あ?あぁ、じゃぁ手を洗ってからな」

そう言うと涼太は手を洗いハンバーグの生地を手で持って空気抜きを始める。

こう見るとやっぱ俺より腕もガッシリしてるし、手も大きい。
俺は女で、涼太は男なんだな…なんて、しみじみ思ってしまう。


「涼太のおかげで思ったより早く終われそうだよ、ありがとなっ」

後は焼くだけだ。
涼太が手を洗ってから、俺が手を洗い終えると…

「何か…新婚さんみたいだね」


また、俺が固まるようなこと言う。
お前はいつもそうだ。
唐突に俺が固まること言って、人を真っ赤にさせ、自分は喜んでる。

それに…
その場の雰囲気を楽しくしてくれる。
笑っててくれるから…なのかな。
こいつのおかげで俺は少し気が楽になった。
西崎さんのことも少しは冷静になれそうだ。

涼太………

「ありがと、な」

涼太に笑顔で感謝の言葉を言う。


「淳ちゃん…」

『何?』と聞こうと思ったら、涼太の腕が高等部をトンと押し俺の顔と涼太の顔が近づいていく。

ちゅっといつもなら軽いキスのみ…なんだが。
な、長い…
長すぎるぞ…


「りょ…息ッくるひっ…」


そう言ってもやめてくれない。
こういうキス何て言うんだっけ…

でぃー…ん?
何だっけ?


そんなことを考えているとだんだんと力が抜け、俺は涼太に寄りかかる姿勢になった。
涼太はそれを軽く受け止め支えてくれる。

「ってこら!苦しいんだよバカ!」

「ご、ごめん!淳ちゃんがあまりにも可愛くてつい!!」


自分の顔の前で両手を合わせる涼太。
さっきの涼太の目がいつもの優しい目じゃなくて、何か、男の目っぽい感じだったのが少し怖くて…でも、かっこ良く見えたのは涼太には言ってやんない。


「と、とりあえずハンバーグ焼くから!離れてろ!」

俺は恥ずかしくなり涼太から顔を背ける。
フライパンに火を通し、油を引いてハンバーグを2、3個焼いていく。

すると、後ろからふわっと抱きしめられる。


し、心臓壊れる…


「危ないって言ってんだろーが…」

「お願い。もーちょっとだけ」

「んん!ばか。」


顔が熱い…
何でこんなに熱いんだよ…
耳まで真っ赤かもしれないな…