彼は何も考えてない。 自分のことも、誰のことも。 私のことだって本当に考えてくれていたら、 こんなふうに会っているはずがないのだ。 「思い出します、一緒にいたら。昔のこと」 グラスを丁寧にコースターの上に置いて、ストローをくるり一回転。 目はテーブルの白に落としたまま。 独り言を装ってしか彼に言えない、私は臆病だ。 なかったことにしたい? 彼は、笑った。