「ばあちゃん、探したよ」
ミヨがぼんやりベンチに腰掛けていた所へ、孫娘の声がした。
「あ、あれ…ちょっと休憩してたんだけどね。年寄りはすぐ疲れるからね」
公園のベンチから立ち上がるミヨの手にはスーパーの袋が下がっていた。
「じいちゃんの好きないかさき?」
希望梨は何の気はなしに言ったのだが、祖母の目から涙がこぼれた。
「もう、ばあちゃんてば。あの気真面目なじいちゃんが浮気する訳ないってば」
希望梨はミヨの左手を握ってブンブン回した。
「…じいちゃんにその気がなくてもね、女の人が寄ってくるんだよ」
「じいちゃんの若い頃の写真見た事あるけど、ハンサムだよね。ばあちゃんだって綺麗だったよ」
「…若かったからね、身だしなみにはそれなりに気を使ってたし」
希望梨は祖母の話を微笑ましく聞いていた。
少しずつ、家に向かって歩いていく。
「未だに、どうしてじいちゃんがばあちゃんを選んでくれたのか分からないよ」
「えっ?恋愛結婚でしょう?」
幼い頃聞かされて憧れたものだ。
祖父−創介には親の決めた許婚(いいなずけ)がいた。創介は名家の跡取り息子だった。
ミヨは創介の家で働く家政婦の娘だった。
いわゆる、身分違いの恋だった。
「じいちゃんはさ、家族を、家を、財産を捨ててでもばあちゃんと一緒になりたかったんじゃない」
「……。最近ね、じいちゃんその元許婚と会ってるんだよ」
ミヨの一言で、二人は立ち止まった。
「タゴさんさぁ、緑町商店街を舞台にした小説書いてくんない?」
「そーだ、そーだ。そしたらセカチューみたいに映画になって大ヒットするべな」
「じゃ、ロケに長澤まさみが来るのかな?」
「タゴちゃん、女優さんが沢山出て来る話にしてよね、っちゅーの」
「タゴちゃん饅頭でも作ったらどうだろう?」
「よっしゃ、早速焼き印のデザイン考えねばな」
和菓子屋のおやじが腕まくりした。
皆悪酔いして、話がどんどん膨らんでいく。
「いや、皆さん、僕が書くのは旅行記でね、小説はあんまり…」
アルコールにほとんど手を付けていない田吾郎は素面に近い。
「じゃあ、緑町商店街の紹介記を書いてくればいんじゃないかい?」
玄さんの一言でワーッと盛り上がった。
ミヨがぼんやりベンチに腰掛けていた所へ、孫娘の声がした。
「あ、あれ…ちょっと休憩してたんだけどね。年寄りはすぐ疲れるからね」
公園のベンチから立ち上がるミヨの手にはスーパーの袋が下がっていた。
「じいちゃんの好きないかさき?」
希望梨は何の気はなしに言ったのだが、祖母の目から涙がこぼれた。
「もう、ばあちゃんてば。あの気真面目なじいちゃんが浮気する訳ないってば」
希望梨はミヨの左手を握ってブンブン回した。
「…じいちゃんにその気がなくてもね、女の人が寄ってくるんだよ」
「じいちゃんの若い頃の写真見た事あるけど、ハンサムだよね。ばあちゃんだって綺麗だったよ」
「…若かったからね、身だしなみにはそれなりに気を使ってたし」
希望梨は祖母の話を微笑ましく聞いていた。
少しずつ、家に向かって歩いていく。
「未だに、どうしてじいちゃんがばあちゃんを選んでくれたのか分からないよ」
「えっ?恋愛結婚でしょう?」
幼い頃聞かされて憧れたものだ。
祖父−創介には親の決めた許婚(いいなずけ)がいた。創介は名家の跡取り息子だった。
ミヨは創介の家で働く家政婦の娘だった。
いわゆる、身分違いの恋だった。
「じいちゃんはさ、家族を、家を、財産を捨ててでもばあちゃんと一緒になりたかったんじゃない」
「……。最近ね、じいちゃんその元許婚と会ってるんだよ」
ミヨの一言で、二人は立ち止まった。
「タゴさんさぁ、緑町商店街を舞台にした小説書いてくんない?」
「そーだ、そーだ。そしたらセカチューみたいに映画になって大ヒットするべな」
「じゃ、ロケに長澤まさみが来るのかな?」
「タゴちゃん、女優さんが沢山出て来る話にしてよね、っちゅーの」
「タゴちゃん饅頭でも作ったらどうだろう?」
「よっしゃ、早速焼き印のデザイン考えねばな」
和菓子屋のおやじが腕まくりした。
皆悪酔いして、話がどんどん膨らんでいく。
「いや、皆さん、僕が書くのは旅行記でね、小説はあんまり…」
アルコールにほとんど手を付けていない田吾郎は素面に近い。
「じゃあ、緑町商店街の紹介記を書いてくればいんじゃないかい?」
玄さんの一言でワーッと盛り上がった。
