「田吾郎君は居ないのか」
ケイの父、創介は到着するなりそう言った。
もう定年を過ぎて長いのに、オーダーメイドのスーツをピシッと着こなしている。
「今日は商店街の話し合いがあるのよ。それと、代表の方が還暦迎えたからそのお祝いも兼ねてね」
ケイは父にソファーに座るよう促した。
まぁ、話し合いより玄さんの還暦にかこつけた飲み会よね…。
「…で、母さんは?」
創介はリビングを見回した。
1番肝心のミヨがいない。
「おつまみ買ってくるってさっき出かけたんだけど…」
母さん、まさか逃げたんじゃないわよね。
「美沙梨達は?」
孫娘達にも長い事会っていない。
「美沙は就活、麻央はバイト、希望梨は母さんを探しに出掛けた。皆そろそろ帰るわよ」
ケイはミヨが大量に切ったネギでネギ焼きを焼いている。
「女の子がこんな遅くまで…」
創介が壁掛け時計を見上げた。
8:30PM。
「そんな遅い時間じゃないわよ」
「今は物騒なんだから…」
創介は所在なげに腕時計の竜頭をいらった。
「シュウカツってなんだ?」
父の発言に、ケイは一瞬ポカンとした。
「あ、あぁ。就職活動の略よ」
「今は何でもかんでも略して…」
創介は不満げにお茶を飲んだ。
「父さん、先にビール飲む?ネギ焼きももう出来るし」
「いい、皆が帰るのを待つ」
「いやはや…商店街は厳しいですな」
誰とはなしに発言すると、歯止めがかからなくなる。
「最盛期の半分も売り上げないんじゃないかな」
「うちは小さな電器屋だからね、大型店が…」
「材料が値上がりしてっからね、食堂も大変だよ」
「商店街全体で何か盛り上げなきゃあ…」
色んな声が飛び交う中、田吾郎は黙って枝豆をつまんでいた。
自分の本の印税と、ケイの書店。楽ではないが、家族皆暮らしていける。
書店もバイトを雇っている訳ではないからよそより人件費はかなり安いだろう。
希望梨には、小遣い程度のバイト代と、好きな本を買って(現物支給?)やったり、後は携帯代を負担している。
使いすぎたら、自分の小遣いから差額を出すように約束している。
「タゴさん、なんかいい考えないかい?」
急に話を振られて面食らった。
玄さんをはじめ、商店街の一同がこちらを見ている。
ケイの父、創介は到着するなりそう言った。
もう定年を過ぎて長いのに、オーダーメイドのスーツをピシッと着こなしている。
「今日は商店街の話し合いがあるのよ。それと、代表の方が還暦迎えたからそのお祝いも兼ねてね」
ケイは父にソファーに座るよう促した。
まぁ、話し合いより玄さんの還暦にかこつけた飲み会よね…。
「…で、母さんは?」
創介はリビングを見回した。
1番肝心のミヨがいない。
「おつまみ買ってくるってさっき出かけたんだけど…」
母さん、まさか逃げたんじゃないわよね。
「美沙梨達は?」
孫娘達にも長い事会っていない。
「美沙は就活、麻央はバイト、希望梨は母さんを探しに出掛けた。皆そろそろ帰るわよ」
ケイはミヨが大量に切ったネギでネギ焼きを焼いている。
「女の子がこんな遅くまで…」
創介が壁掛け時計を見上げた。
8:30PM。
「そんな遅い時間じゃないわよ」
「今は物騒なんだから…」
創介は所在なげに腕時計の竜頭をいらった。
「シュウカツってなんだ?」
父の発言に、ケイは一瞬ポカンとした。
「あ、あぁ。就職活動の略よ」
「今は何でもかんでも略して…」
創介は不満げにお茶を飲んだ。
「父さん、先にビール飲む?ネギ焼きももう出来るし」
「いい、皆が帰るのを待つ」
「いやはや…商店街は厳しいですな」
誰とはなしに発言すると、歯止めがかからなくなる。
「最盛期の半分も売り上げないんじゃないかな」
「うちは小さな電器屋だからね、大型店が…」
「材料が値上がりしてっからね、食堂も大変だよ」
「商店街全体で何か盛り上げなきゃあ…」
色んな声が飛び交う中、田吾郎は黙って枝豆をつまんでいた。
自分の本の印税と、ケイの書店。楽ではないが、家族皆暮らしていける。
書店もバイトを雇っている訳ではないからよそより人件費はかなり安いだろう。
希望梨には、小遣い程度のバイト代と、好きな本を買って(現物支給?)やったり、後は携帯代を負担している。
使いすぎたら、自分の小遣いから差額を出すように約束している。
「タゴさん、なんかいい考えないかい?」
急に話を振られて面食らった。
玄さんをはじめ、商店街の一同がこちらを見ている。
