同じ頃、桜井美沙梨はビジネス街にいた。希望梨の長姉で、大学4回生、就職活動、就活の真っ最中。
「えっと、ここが日浦マンションだから…」
地図を頼りに独りごちる。
「日浦マンションのはす向かいにあるのが…」
見上げても追い付かないような高層ビル。このビルに、そしてその21階に美沙梨の夢がある。
着慣れないスーツに、パンプスを履いていざ出陣。美沙梨はビルのドアをくぐった。
「いや〜、見たかったなぁ」
りみは焼きそばパンにかぶりつきながら悔しがる。
「笠倉君ユメちゃんの事心配しただけなんだと思うわ。つい、口が滑って余計な事言ってしまったのよ」
涼子はペットボトルの紅茶を飲み、そしてマフィンを小さくちぎった。
「名前の事なら自分でちゃんと言えたのに」
希望梨はラーメンの汁をズズッと飲んだ。
「やっぱりアンとギルバートなんだね」
紙パックの珈琲牛乳を飲みながらりみが笑う。
「えっ、何の話?」
涼子は小学生時代の希望梨と稔のエピを知らない。
「私も中学迄二人の事知らなかったから人から聞いた話なんだけど…」
りみが話そうとするのを希望梨が手を振って遮った。
「『赤毛のアン』は好きだけど、私達は違うわ。物語では時を経て二人が理解を深めるけど、稔とは時を経て関係が悪化してるし。ただの昔なじみなだけ。そりゃ、悪い奴じゃないのは分かってる。でもそういう対象じゃない」
希望梨はラーメンを食べ終わり、食堂のメニュー表をぼんやり見上げた。あら、今日から揚げ定食安い日だったんだ。気付かなかったな。から揚げ食べたかったなぁ。今からでも食べられそうな気もする。でも太るよね…。財布は痩せるけど。
そんな事を希望梨がぼんやり考えている時、りみが涼子にささやいた。
「アンを怒らせたギルバートは長い間片思いだったのよ。笠倉は間違いなくギルバートだね。希望梨は自分がアンなのに気付いてないだけだと思う」
「…そんな気がする」
その時涼子は一瞬寂しげな表情をしたのだが、りみは気づかなかった。
その頃、希望梨の母ケイが接客中に、電話がなった。今目の前にいるお客さん優先なので、留守電に任せる事にした。
『お電話ありがとうございます、BOOKSケイです。ただ今電話に出られません。発信音の後にお名前と連絡先をお願いします。折り返し連絡します』
「えっと、ここが日浦マンションだから…」
地図を頼りに独りごちる。
「日浦マンションのはす向かいにあるのが…」
見上げても追い付かないような高層ビル。このビルに、そしてその21階に美沙梨の夢がある。
着慣れないスーツに、パンプスを履いていざ出陣。美沙梨はビルのドアをくぐった。
「いや〜、見たかったなぁ」
りみは焼きそばパンにかぶりつきながら悔しがる。
「笠倉君ユメちゃんの事心配しただけなんだと思うわ。つい、口が滑って余計な事言ってしまったのよ」
涼子はペットボトルの紅茶を飲み、そしてマフィンを小さくちぎった。
「名前の事なら自分でちゃんと言えたのに」
希望梨はラーメンの汁をズズッと飲んだ。
「やっぱりアンとギルバートなんだね」
紙パックの珈琲牛乳を飲みながらりみが笑う。
「えっ、何の話?」
涼子は小学生時代の希望梨と稔のエピを知らない。
「私も中学迄二人の事知らなかったから人から聞いた話なんだけど…」
りみが話そうとするのを希望梨が手を振って遮った。
「『赤毛のアン』は好きだけど、私達は違うわ。物語では時を経て二人が理解を深めるけど、稔とは時を経て関係が悪化してるし。ただの昔なじみなだけ。そりゃ、悪い奴じゃないのは分かってる。でもそういう対象じゃない」
希望梨はラーメンを食べ終わり、食堂のメニュー表をぼんやり見上げた。あら、今日から揚げ定食安い日だったんだ。気付かなかったな。から揚げ食べたかったなぁ。今からでも食べられそうな気もする。でも太るよね…。財布は痩せるけど。
そんな事を希望梨がぼんやり考えている時、りみが涼子にささやいた。
「アンを怒らせたギルバートは長い間片思いだったのよ。笠倉は間違いなくギルバートだね。希望梨は自分がアンなのに気付いてないだけだと思う」
「…そんな気がする」
その時涼子は一瞬寂しげな表情をしたのだが、りみは気づかなかった。
その頃、希望梨の母ケイが接客中に、電話がなった。今目の前にいるお客さん優先なので、留守電に任せる事にした。
『お電話ありがとうございます、BOOKSケイです。ただ今電話に出られません。発信音の後にお名前と連絡先をお願いします。折り返し連絡します』
