さっきまで雅恵を抱いていた腕を、風がすり抜けていく。風の残した冷たさと寂しさが、胸を締め付ける。
涙を拭う雅恵の肩を抱いた斎木さん。
寄り添う二人を囲んだ皆の輪から、いつの間にか弾き出されてしまっていた。
幸せを醸し出す二人を皆の背中越しに見つめながら、『幸せになってね』と心の中で祝福を贈る。
その瞬間、ぐいと腕を引っ張られた。
皆とは反対側の後ろの方へと。
あまりにも突然で状況も飲み込めずに、ただ引っ張られていく。
必死に振り向いたら、武田君の背中が目に飛び込んだ。
「武田君? なに?」
問いかけても、答えてくれない。
掴んだ手を解くことよりも、ついて行くのに必死。
ずんずんと大股で歩く武田君に合わせていたら、足が絡みそうになる。いつもよりお酒を飲んでたからなおさら足元が覚束ない。
皆の背中が遠ざかっていく。
私が訳もわからず武田君に引っ張られていることなんて、誰も気づいてない。

