宴会はお開きになり、店の前で主役の二人を囲んでいた。今日限りで退社する雅恵との別れを、皆が惜しんで帰ろうとしない。



奈緒さん、ありがとうございます。本当に、本当に感謝してます」



すでに涙で頬を濡らした雅恵が、私の手を取り上げた。握り締めてくれる手から、雅恵の感謝の気持ちが痛いほど伝わってくる。



嘘偽りの無い雅恵の気持ちが嬉しい。



私は、後悔なんてしていない。
悔しいとも思わない。



「おめでとう、雅恵。もう泣かないで、来週ご飯食べに行くでしょう」
「はい、泣きません。でも……、嬉しくて……」



声を詰まらせたと思ったら、さらに涙が溢れ出た。鼻をすすって肩を揺らして、子供みたいに泣きじゃくる困った妹。



「ほら、泣かないの。化粧が取れちゃうよ?」



ハンカチを渡したのに、ぎゅっと握り締めたまま。拭こうとしないから、取り上げて頬を拭いてあげた。



それでもまだ、涙はどんどん溢れ出してくる。