斎木さんは私の指導員だった。



私より五歳上で柔らかな顔立ち、長身でふわりとした雰囲気。それなのに仕事をこなす姿はきびきびとして凛々しい。
厳しいことを言うも多々あるけど、丁寧に優しく根気よく指導してくれた。



一日の大半を過ごしている職場で、私が斎木さんを好きになってしまうのは当然の成り行き。



だけど小心者の私は、なかなか気持ちを打ち明けることができなかった。



もし伝えてしまったら、斎木さんとの関係が崩れてしまうかもしれない。



失くしてしまうのが怖くて、私は気持ちを胸の奥に沈めることを決めた。



一年経ち、斎木さんは私の指導員から外れ、引き続き直属の上司として私の傍にいて仕事をすることに。



クリスマスやバレンタイン、いろんなイベントが訪れるたびに気持ちが大きく揺さぶられる。何度も打ち明けてしまおうかと悩んだけれど、やはり私は決意することができなくて。



斎木さんを見つめているだけで、満足していた。